株式会社モンスターラボ 採用統括責任者である井上悠氏、リンクトイン・ジャパン株式会社 シニアマネージャーの早瀬恭氏をお迎えし、ダイレクト採用チーム強化のための秘訣公開イベントを実施しました。(2021年9月28日開催)
まずは早瀬氏より、採用ナーチャリングのススメについて語っていただきました。
ダイレクトリクルーティング、とりわけLinkedInをはじめとしたSNS採用(ソーシャルリクルーティング)の実践において、候補者ナーチャリングの重要性についてデータも交えながらお話しいただきました。
目次
採用ナーチャリングのススメ ~ 採用はフローからストックへ、そしてナーチャリングへ ~
早瀬氏によれば、採用までに超えるべき壁は3つあるとのことです。その壁とは、以下の3つです。
- 認知の壁
- 興味の壁
- 応募の壁
認知の壁を超えるためには「拡散力」、興味の壁を超えるためには「訴求力」、応募の壁を超えるためには「タイミング」が必要になるとのことでした。どれだけ良い企業、またはどれほど魅力がある企業でも、実際に応募の壁を超えるか否かは、候補者の気分に左右されてしまうのです。
転職サイトに登録している候補者などは、自らで応募の壁を超える可能性が高い母集団ですが、転職潜在層を狙った採用については、認知の壁 → 興味の壁 → 応募の壁という極めて長い採用プロセスが待っていることになります。
では、それぞれの候補者が転職に対してどのような状態であるのかといった点は、どう判断すれば良いのでしょうか。
早瀬氏によれば、候補者は「転職への行動」と「転職の検討」という2つのラインで構成される3つのゾーンで考えることが大事だとのことです。なお、LinkedInの方針としては、Passive Zone(転職活動を行うまでではないが、転職に対して一定の興味を持っている集団)、および Proactive Zone(積極的に転職を検討している集団)という2つのゾーンをターゲットとしているとのことでした。
ただし、その候補者がどのゾーンに属しているのかといった点は、なかなか判断がつきにくいものです。だからこそ、それぞれのファネルできちんと候補者をストックし、ナーチャリングすることが重要となってくると仰っていました。
ちなみに、LinkedInを使えば、自社がどれだけ認知されているのか、興味を持たれているか、応募があったのかという指標について、すべてデータで可視化できます。これがLinkedInで採用活動を行う最大の強みであるとのことでした。
ナーチャリングの3原則
早瀬氏は、ナーチャリングの3つの原則についてもご説明くださいました。ナーチャリングの3原則とは、以下の通りです。
- 接点の継続(個人として繋がる or フォロワーとして繋がる or 会社として繋がる)
- 情報の提供(コンテンツ記事 / エンジニアリング系 / 業界ニュース)
- 機会の提供(求人情報、ミートアップイベント、スカウティング など)
それぞれの具体的なアクションについては、メリットと難しさがあります。その特性を理解し、候補者に対して、継続的に接点・情報・機会の提供をすることが重要であるとのことでした。
最後に早瀬氏から、日本にあるコンサルティング会社2社を事例として、ナーチャリングがダイレクト採用の結果に大きな影響を与えることを、具体的な数値データと共にご説明いただきました。決して自社の認知やフォロワー数の多さだけが採用成功に寄与するわけではない、適切に候補者にナーチャリングを行うことで採用成功を目指すことができるとのことです。Webiner参加者からも視覚的で分かりやすい早瀬氏の説明に、勉強になったとの声が多く集まりました。
次にモンスターラボの井上氏に、ダイレクト採用チーム強化のための秘訣について語っていただきました。
モンスターラボ社は「多様性を活かし、テクノロジーで世界を変える」というミッションを掲げており、デジタルコンサルティング事業を展開しているそうです。日本を中心として17カ国28拠点(9/28セミナー開催時)を有するグローバルな企業であり、現在もなお急激な成長を持続しています。このような成長を支えるために、採用が重要な役割を担っているとのことでした。
モンスターラボ流 採用チームの作り方
採用チームは何人が適正?
参加者皆さんも一度は悩んだことがあるのではないでしょうか、採用チームを作る際、よくある悩みが「どれくらいの人数が適正なのか」という点です。
まず、井上氏より、モンスターラボの採用実績の状況についてご説明いただきました。井上氏によれば、モンスターラボ社の今年の採用実績は、昨年対比で304%という驚異的な実績を記録しているそうです。現在、モンスターラボ社が積極的に採用している職種としては、PM、テックリード、UI/UXデザイナーが中心だそうです。これらの職種は、他の多くの企業が苦戦を強いられていることが多いです。そのような環境の中で、同社はしっかりと採用数を積み増している様子が伺えます。
では、なぜこのような素晴らしい採用実績を残すことができているのでしょうか。
井上氏いわく、最大の理由は「採用チーム体制を強化したから」だそうです。同氏がモンスターラボに入社後、最初に着手したのは、採用チームの体制強化だったそうです。モンスターラボ社の採用チーム人数を昨年対比で約2倍まで大きくなっているとのことでした。まるで強い営業チームをつくっている、そんなお話でした。
ただし、多くの企業では、採用チームの増員を行うことは容易ではありません。また、無計画に採用チームを増員しても、ただ人件費コストが増加するだけで期待したパフォーマンスが出せないリスクもあります。
井上氏は、この課題をどのように解決していったのでしょうか。同氏によれば、採用チームの適切な人数は、対象とする職種や採用難易度によって異なるとのことでした。ただし、どのような企業であっても共通していえるのは、factをベースにシミュレーションをしてみることが重要だという点だそうです。
モンスターラボ社でも、以下のような数値をもとに様々なケースでシミュレーションを行い、採用業務の中で課題を抱えているポイントを抽出していったそうです。
- 書類選考通過率
- 一次面談数
- 内定承諾率
- 辞退率
また、採用チームの役割を言語化し、関係者の共通認識となるように定義化することも重要なポイントであると仰っていました。
上記のようなプロセスを経て、採用チームに必要な人数を割り出していくと良いとのことでした。採用チームを強化するとどれほどのインパクトをもたらすのか、経営陣に採用チーム強化の合意形成を取った際もFactベースのデータでプレゼンをされたというお話が印象的でした。
エージェント比率の適正値とは?
次に、採用活動においてエージェント比率はどれくらいが適正かという点を井上氏に語っていただきました。
まず井上氏は、エージェント比率の適正値は企業によって異なると仰っていました。採用関係者の中では、ダイレクトソーシングこそが最善の採用手法であるといった、いわば「ダイレクトソーシング至上主義」的な考え方が存在しているそうです。ただ、同氏はダイレクトソーシングが必ずしも全てのケースで最適解になる訳ではないというお話が印象的でした。ダイレクトソーシングのメリットやデメリット(難しさ)を理解したうえで、自社を置かれている状況を理解し、エージェント比率やダイレクトソーシング比率を考え、実践していくことが重要であるとのこと。
どんなスキルを持った人を採用すべきか?
井上氏には「どんなスキルを持った人を採用すべきか」といった点についても、お話いただきました。
井上氏が考えるリクルーターに求められるマインドセットは下記のポイントだそうです。
- 事業貢献から逆算して考えられる人
- 数字や期日に対してやり切れる人
エージェンシー出身者と事業会社人事(インハウス)出身者といったバックグラウンドによっても、強みやスキルの大まかな傾向や特徴があるとのこと、それらのポイントを考慮して採用チームを強化すると良いだろうとのことでした。
どのダイレクトソーシングチャネルを活用すべきか
また最後に「どのダイレクトソーシングチャネルを活用すべきか」といった点についてもご説明いただきました。
ダイレクトソーシングに関するチャネルとしては、LinkedIn、ビズリーチ、Wantedlyなどがあげられます。これらのメディアやデータベースはそれぞれ登録しているユーザーの職種、年齢層、スキル傾向などが異なっています。どのメディアにどういったタイプの人材が登録しているのかといった点を理解し、また平均返信率などのfactを元にシミュレーションし、採用チャネルを継続的に検討強化していくと良いと仰っていました。
井上氏のこれまでの実体験をもとにしたお話には説得力があり、再現性ある採用を実践してきたお話に熱量高く質問が集まってきたのが印象的でした。
最後に、弊社の芦川より、RPOを含む採用チームの作り方をテーマにTipsをお伝えしました。
RPOを導入する理由
まず、RPOを導入する企業様のニーズは、主に以下の2点に集約されます。
- ナレッジが欲しい
- 工数が足りない
前者の場合、社内にダイレクト採用の経験者がいなかったり、ダイレクト採用があまり上手くいっていないといったケースが多いです。後者の場合は、採用メンバーを増やせない、拡大する自社の採用ニーズに対しリクルーター体制が不足している、あるいは採用コスト削減のために導入されるケースが多いようです。
採用チームの構成例
弊社がRPOの依頼を受ける際のクライアント様よりいただくご支援ニーズは主に以下の2パターンです。
- 外部リクルーターとして採用プロセスを一気通貫で支援して欲しい
- 「母集団形成」のみを支援して欲しい
①の場合は、対象お客様自体の状況と採用課題について深く理解する必要があります。弊社にとってのご支援難易度も高く、一方で外部リクルーターを活用することによる介在価値を発揮しやすいスキームになります。弊社としても最大限の覚悟をもって対応させていただいております。
一方、②の場合は既存の採用オペレーションを大きく変えないため、早期にスタートできます。ただし、ダイレクトソーシング特有の候補者ナーチャリングの対応など、一部のお客様側にてご対応いただくケースがございます。
なぜダイレクト採用を頑張るのか
では、なぜそもそもダイレクト採用を頑張らないといけないのでしょうか。
もちろん、企業様の状況によっては注力しなくてよいケースもあります。採用だけではなく事業面に与える影響についても考慮しながら、自社に適した採用方法を選択し、実践すべきという話が印象的でした。
何れにしてもダイレクト採用を行えるのであれば、やるに越したことはないと考えます。なぜならば、ダイレクト採用を行うと流入経路が増えるため、接触できる候補者の質・量ともに大幅な改善が期待できます。また、採用競合の他社がダイレクト採用を行っている場合、他社に候補者を奪われるというリスクがあり、それを防ぐためにも実践すべきと考えます。
登壇者皆様の興味深いお話に大変盛り上がったセミナーとなりました。パネルディスカッションの時間で語りきれなかったお題、また当日回答しきれなかったご質問については、LinkedIn内の「ITエンジニア採用交流会」の中で回答をしておりますので、是非ご参加ください。
今回のイベントでは、多くの企業人事皆様の悩みである採用チーム体制の強化をメインテーマに、様々なTipsも交え幅広くお話ししていただきました。すぐに実践できる事例もあったのではないでしょうか。イベントにご参加いただいた皆様も、何かご自身の活動に役立てていただけると嬉しいです。
イベント登壇企業紹介