こんにちは、LeINの藤田です。
人材業界の企業担当営業を経て、様々な企業の中途採用をパートナーとして担ってきました。人材業界の規制緩和とともに、これまでの終身雇用制度は崩れ転職は当たり前の選択肢となり、新しい横文字の人材サービスが、文字通り、雨後のタケノコのように生まれました。
採用のご担当者は、インターネット技術の進化とともに、次々と生まれる新たな人材サービスに辟易しながらも多くのエージェントを活用し、時にはターゲット人材に自らスカウトをするダイレクトリクルーティング、ダイレクトソーシングや、社員からの紹介のリファラル採用など、人材の確保や自社の採用ブランディングのため様々な手を尽くしてきたのではないでしょうか。
本日は、新たな採用戦略の一つとして注目を集めている「アルムナイ」採用について、2回に分けて、ご案内したいと思います。
イメージ【雨後のタケノコ】
目次
①アルムナイ採用とは
②アルムナイ採用の4つのメリット
③アルムナイ採用におけるアドバイス(次記事)
④アルムナイ採用を成功させている他社の事例(次記事)
⑤まとめ(次記事)
①アルムナイ採用とは
「アルムナイ」という言葉を、なんとなく耳にしたことはありますでしょうか。もともとは「卒業生、同窓生、校友」のことを指す英単語です。転じて、企業においては「自社企業を退職した人たち」を意味します。「アルムナイ採用」とはこの元社員を人的資源としてリレーションを構築し再雇用することです。社員紹介や縁故による採用のリファラル採用とは違い、もともと自社で働いていた元社員ですから、新しく雇用するよりも、社風に馴染みやすく即戦力として活躍してもらうことが期待でき、早期の離職の懸念もありません。「なんだ、出戻り社員のこと?」と思う読者の方も多いことと思いますが、その通りです。「それならうちの会社にもいるよ」という会社も多いのではないでしょうか。
2018年に『エン 人事のミカタ』が発表した調査によると、「一度退職した社員を、出戻りで再雇用した企業は67%→72%」と2年前より増加し、「再雇用した企業の約8割で、周りの社員の反応が「良い」と回答。」したそうです。
引用:人事のミカタ
これまで中途採用などで「自社の経験者」をターゲットから外していたご担当者も多いと思いますが、これまで弾いていたターゲットこそが、このアルムナイ採用となります。もともと雇用の流動化の進んでいる外資系企業では一般的でしたが、日本でも受け入れやすくなっている、といえます。
②アルムナイ採用の4つのメリット
1)採用コスト・選考コストの削減
新たに募集をかけると、募集要項の作成や部門との打ち合わせ、ターゲットの選定、書類選考に適性検査、面接日程の調整、会場の確保、そして面接そのものなど、コストが相当にかかります。特に中途採用の場合は、競合先との兼ね合いから、選考のスピードも採用成功のキーとなるため納得するまでじっくり選考する、というわけにはいきません。
しかしアルムナイのネットワークであれば、人物と仕事ぶりについては理解しているため、お互いの時間の節約につながるうえに、募集広告やエージェントにかかるコストも削減できます。
また、実際によくあるケースとして、アルムナイのネットワークに人材募集をかけたところ、ぴったりの人材を紹介してもらい採用に至るというもの。現場を良く知る元社員からの紹介は安心できますよね。さらに社員としてだけではなく、契約社員や業務委託などでプロジェクト単位で業務をお任せする、といったケースも多いようです。
2)即戦力として早期の活躍の期待
当たり前といえば、当たり前なのですが、アルムナイは元社員なのですから、即戦力です。基本的には会社の事業内容や仕事内容を理解しているため、通常採用の方に必要な基本的な研修などは不要なケースも多く早期ランディングを期待できます。転職先では、仕事内容を理解し、人間関係を築くのには、ある程度の時間を要します。会社に馴染んでからようやく能力を発揮できる方が、一般的でしょう。
一方、アルムナイは、同期などのネットワークもあるでしょうから、困ったことが起きても、自身で解決できることも多く、勤続年数や配属先のポジションにもよりますが、立ち上がりが早く早期の活躍が期待できます。そして自身の意思で再入社を決めたわけですから、離職も起こりずらく早期の離職率は低いでしょう。
3)採用ブランドの確立
転職サイトなどのSNSの口コミサイトをみると、残念ながらネガティブな書き込みをしているのは元社員が決して少なくありません。就職希望者や転職希望者のほとんどが目を通すといわれる自社の口コミによる影響は計り知れないものがあります。退職者と退職後も円満なコミュニケーションを継続することで、企業のブランドイメージを損なうリスクを軽減することができます。
退職者は自社の一番のファンになる可能性も高く、採用ブランディングだけではなく、自社の商品やサービスのイメージの向上につながることも期待できます。
4)現場の活性化
アルムナイの再雇用に、もしかしたら現場から戸惑いの声もあがるかもしれません。「未経験でも若い方を採用して、現場で育てた方がよい」という考え方も、大いにあると思います。しかしご存知の通り、若年層の労働人口はさらに減少し、新たな採用は更に難しくなります。働き方改革のもと、副業や兼業も当たり前になってきています。
OGやOBといったアルムナイも含め様々な立場のメンバーの経験を大いに活用するマネジメント力が現場の社員にも重要になってくるのではないでしょうか。
また社員にとって、もしも退職してもまた戻ってこられる可能性があることは心強く、自身のキャリア形成において選択肢が多いことは社員の満足度の向上につながります。
以上、アルムナイ採用について、大枠はご理解いただけましたでしょうか。
それでは次回はこの制度を積極的に活用するために、「③アルムナイ採用におけるアドバイス」「④他社の事例」「⑤まとめ」をお送りしたいと思います。